・チゴモズ
鹿児島でも渡りの頃に出会えますが、新潟には毎年繁殖に来ています。新潟県・福島県・山形県・秋田県で夏に見れます。
・トモエガモ
昔は数が少なく一羽見つかると人が集まってきていましたが、最近は鹿児島県内でも確認ができて写真の場所では20万羽が来ているようです。この場所はシジミやワカサギ取りの船が通る場所で、船が通過すると一斉に飛び立った時の写真です。カモ類の多くは夜行性で昼間は水辺で休憩をして夜になるとドングリなどを食べに出かけます、コナラの木のある場所へ好んで飛んで出かけます。
叶内拓哉氏の
野鳥セミナー

1946年東京都生まれ、東京農業大学農学部卒業後に野鳥撮影をはじめて、全国各地で野鳥の写真撮影する旅をするようになった。その後フリーの野鳥写真家となる。
カルチャースクールや自然観察会などでバードウォッチングや野鳥写真の撮り方などの指導をする。
著書に「鳥に会う旅」(世界文化社)、「野鳥写真マニュアル」(東海大学出版社)、「野鳥写真の撮り方」、「絵解きで野鳥が識別できる本」(文一総合出版)
共著書に「山渓ハンディ図鑑 新日本の野鳥」(山と渓谷社)、「フィールドガイド 日本の野鳥・増補改訂版」(日本野鳥の会)など多数。
2025年4月20日(日)午後1時30分より鹿児島市祇園之洲にあります鹿児島社会福祉協議会・福祉コミュニティーセンターにて野鳥写真家・叶内拓哉氏による「バードウォッチング・セミナー」が開催されました。
会場には鹿児島県内外の愛好者約70名参加され、野鳥写真を見ながら鳥の特徴や見分け方、またカメラによる撮影テクニックを取り混ぜた講話をたっぷり1時間半聞かせてもらいました。
野鳥写真を紹介しながら野鳥について
・キジ
国鳥であり、以前にはキュウシュウキジがいましたが狩猟の為に増殖されるようになり、野鳥?ではなくなってしまっている感じもしますが、特徴は尾羽の横縞が少しずれており、また胸のあたりの色が緑から緑紫になってます。鳥は南方に行くほど色が濃くなる特徴を持っています。
・出水のツルにちなんで
出水・荒崎の田んぼで撮った45年前のツルの写真を紹介してもらいました、ツルなどの大型の鳥(ガンやタカ)は近年数が増えてきていますが、小鳥たちは反対に数を減らしています。昨年アメリカで発表されたアメリカ大陸の鳥は30億減ったと報告され、世界的にも鳥の総数は減少気味にあるようです。人間による開発や農薬で虫が居なくなり、また木は根っこから農薬を吸い上げて実に農薬が残りそれを餌としている小型の鳥に影響が出ています。逆に大型の鳥はその害は少ないとされてます。鳥の後は人間に影響が間違いなく出るでしょうから、鳥や動物の後は人間に回って来るので怖い時代に入ったような気がします。
・ハクガン
毎年越冬にやってきています。鹿児島県には滅多にきませんが島根県ぐらいまでは来ているようです。写真は新潟県のものですが秋田県の八郎潟には11月10日頃から2月いっぱい確実に見れる鳥です、秋田大学の農場が一番のポイントです。

・シノリガモ
顔に複雑な模様の入ったカモでメスがヒナといる写真で、青森県の奥入瀬川のダムの近くで撮りました。なかなか見ることも撮ることもできない鳥で運がよかったです。
・アホウドリ
東京湾から三宅島航路で行くと明け方4時頃三宅島に着きます。アホウドリは5才頃まではまだ若鳥で10〜12才で成鳥になります。若鳥は背中が茶黒くしてますが成鳥になると真っ白に変わります。昔は「翁鷺」と言われてました。
・チシマウガラス
北海道に生息するがなかなか見る事のできない鳥で、根室の先端の納沙布岬あたりで見れます。根室港から船で行くと見れます。以前は繁殖も確認されましたが、今は別の島で繁殖しているようです。
・シマフクロウ
今はいろんな場所で撮れるようになりましたが保護が始まる前は地元の方の情報を基に出かけてみますが居ません、近くの木の下にネズミの死骸が沢山あったのでこの木に来る事の確認ができました。一旦東京に帰り2ヶ月後に地元の方から連絡があり出かけるとシマフクロウが居ました、この時は魚を咥えてる写真が撮れました。
・ケアシノスリ
鹿児島の方には滅多に来ない鳥です。20年前までは日本には幼鳥しか来ていないと言われてましたが、北海道と青森で成鳥が確認されました。今年は根室で暗色型が越冬しました。ケアシノスリの成鳥が見れるようになったのは十数年前からです。ノスリとは野原の上をスルように飛ぶことで名前がつきましたが、ケアシノスリは足の所まで毛深くなっているのでケアシ+ノスリになりました。
・コノハズク
親子5羽が並んでいる写真です。撮影したのは青森のリンゴ園の中で、15年前まではよく繁殖を見ることができました。この写真では木の枝に横並びに止まってますが、左端の親はヒナの後ろへ飛び立って餌を取りに行き、ヒナには2羽づつ餌を与えてます。また親鳥が餌探しに行くと残りのヒナが親鳥の止まる場所へ移動し先に食べた2羽と入れ替わります。ヒナ全員が交互に食事する場面に本当に感心させられました。このリンゴ園の方がどうぞどうぞと私を園内に入らせてくれて、帰りにお礼を言うと「スモモを持って帰って!」と言われ、邪魔したのにお土産までもらって嬉しかったです。東京に帰ってお礼に本を贈ると毎年のようにリンゴが送られてきました。私は大きなパネル写真を送りました。
・ライチョウ
冬の楽しみのひとつです。雪が開けた時期に行くと見ることができます。写真は残念ながらメスが2羽で黒い部分のあるオスはいませんでした。昔は4月25日頃から出かけていましたが最近は少し早く4月20日頃に出かけます。立山で撮りましたが出会えるのは運次第ですね!
・ヤマショウビン
春になると毎年対馬へ通っていて、5月になるとヤマショウビンが1回は出てくれると聞きましたので、3日間の滞在で一度だけ見れて写真も撮れました。
・クマゲラ
北海道で運が良ければ出会える鳥で、5月下旬〜6月上旬になるとカメラマンが殺到する。昔は巣の近くでないと撮れなかったが、今は意外に見れる鳥になってきた。
・ヤマゲラ
鹿児島で見れるのはアオゲラで、お腹に縞模様が入っていますけどヤマゲラはお腹は真っ白です。北海道に主に分布し、夏も冬も見ることができます。民家の庭の木に止まることもあり、冬はシマエナガと一緒に楽しめます。
・シロハヤブサ
写真は青森県で撮ったもので、青森は色んな鳥が楽しめる場所なのですが、皆さんは青森を通過して北海道に鳥見に行ってます。シロハヤブサは北海道・砂原町が有名ですが、ここ10年くらい情報が少なくなっている。
・シマエナガ
今人気のある鳥でとても可愛いです。かわいい鳥の条件は、目が黒くて嘴が小さい事です。例えば、マガンの顔を見て「可愛い!」と言う人は少ないですが、同種のカリガネの顔は「かわいい」と皆さん言われます。同じような身体つきなのにカリガネは嘴が短く、目は黒目ではっきりしているので「かわいい」と感じるのです。フクロウも同様に可愛いと言われます。
・マキノセンニュウ
チリリリと可愛い鳴き声で、夜になると10分ほど鳴き続けます。昼間は2・3分程しか鳴きません。この写真はハマナス花の上で鳴いてますが、こんな場面の写真はなかなか撮れないと皆さん言われます。
私の撮り方は、まず双眼鏡で遠くから鳥のいる場所と行動・移動場所を確認して撮影場所を決めて、鳥がやって来るのを待って撮ります。最近の人は待って撮ることをしません。鳥がいたら近づいて行って撮ろうとするから、鳥の方から逃げてしまいます。なので一番写真構図の良い場所を決めて待つことが大切です。

・エゾセンニュウ
撮れない、本当に撮れない鳥です。昔は民家の庭先にもやって来るぐらい沢山いたのですが、今は見れなくなっています。藪の中で声とかは聞けて居ることは分かりますが、表に出て来なくなってます。藪の中を移動する様子は分かってもなかなか撮れません。私は50年間でたったの2回しか撮ってません。
・オオセッカ
鹿児島でも国分干拓とか薩摩川内市の方で越冬しているので、今頃(4月中旬)に夜暗くなると鳴きます。姿は見えないが声だけは聞こえます、寝る前に鳴くんですよ。日が落ちて20〜30分すると鳴いていることが確認できます。繁殖地は千葉県・茨城県・青森県・秋田県の4県だけです。
・マミジロ
この鳥もなかなか見れない!赤城山の麓で撮ったものです。鳴き声が可愛いキョロリィーと一声だけ鳴く、シロハラやアカハラは何回も繰り返し鳴くがマミジロは1回だけ鳴くのです。
・ユキホオジロ
北海道の道東の海岸に近い草原に行くと出会えます。写真はハマニンニクに止まっているところです。
・ギンザンマシコ
赤くて背が黒くて大きいので皆さんが見たい鳥です。北海道の大雪山のロープーウェイで登って、そこから15分ほど歩いて登ると展望台が第1・第2・第3・第4とありますが、第2展望台に行くとカメラマンが必ずいます。また知床草原の尾根を越えた先の駐車場も有名でカメラマンがいます。撮影ポイントがわかっているので皆さんポイント方向ばかりに集中していて、カメラとは逆方向に鳥がやって来ているのに気付かないようです。

➖➖質疑応答➖➖
・カモはよく交雑種がいますが、他の鳥でもあるんですか?
カモ類は多いのですが一番多いのはカモメです。カモメの中でもセグロカモメなどの大型のカモメが多いです。カモの場合はオスの方が交雑の見分けが多くて、メスの交雑は見分けにくいです。またコウライキジと日本キジの交雑もいましたが増えていないので、コウライキジを大陸キジとして別種扱いになりました。
他にもシギでもあります。サルハマシギとコオバシギの交雑種が確認され、不思議なシギと日本では言われていましたが、今から10年程前にオーストラリア人の方が2年連続で確認したので、新種として学会に発表され認められて鳥類会議でも新種となりました。しかし3年後に調べてみるとサルハマシギとコオバシギの雑種であることがわかり、新種の登録は取り下げられました。
小鳥は交雑はあまりありません。ハシブトガラスとハシボソガラスはよく似ていますが交雑はありません。
・先生が撮影に出かけるとき、どの程度の機材を用意されますか?
今はデジタルになって性能も格段に向上しているので、肩にぶら下げる程度のもので撮影に行きます。三脚も今は持って行きません。それはカメラの性能が向上してブレることがなくなているので必要なくなったからです。そして今はカメラマンと言う職業が成り立たなくなっています。例えば200万の望遠レンズに100万のカメラで撮ると大きく・綺麗で引き伸ばしてもクッキリとした写真が撮れますが、それをやっても仕事にはなりません。また写真集を作成しても商売になりません、出版社も今は作りません。

カメラの性能が向上したことで、講習会とかではカメラの操作技術よりも写真撮影(よりきれいな写真)の技術を教えます。一番に言うのは「バック(背景)がきれいだったら綺麗な写真になる」と伝えます。
また写真を撮るには3つの要素が大事で、例えば「白梅とメジロ」では2つの要素ですが、白梅の横に紅梅があれば紅梅も画角に入れることで3つの要素になります。写真に3つの要素があると見る人は綺麗な写真と言ってくれます。なので背景を考えることは大切だと伝えています。
また撮る角度で写真は大きく変わります。右に一歩・左に一歩移動するだけでも構図は変わりますので、最適な構図で撮るようにします。色々と練習して完成度も身につけてください。
ついでに、
鳥の目は色盲ではなくて紫外線を含めて4色で見分けます、よく迷彩服を着ると目立たないと言いますけど、人間からはそう見えても鳥の目(紫外線を含め)には派手な服に思われてるかもしれません。光の反射で色を見ているので、どんな服(白でも赤でも)で撮影しても大丈夫です。
色もですけど音も鳥には大きな影響はありません。車の音や飛行機の大きな音も鳥にはまったく関係ありません。鳥が嫌がるのは人間の形(姿)です、人間であることが分からないような形で鳥に近づけば、鳥は怖がることはありません。鳥が一番嫌がるのは長い棒です。三脚も棒のようにも見えますが人がカメラと三脚を手に持って移動すれば棒には見えず大丈夫です。
・撮影のマナーについて
最近一番多い行動は、多くの方が三脚立てて並んで撮影している目の前を、撮影が終わった人で三脚を持ったままカメラの皆さんの目の前を堂々を横切って帰って行く人で、当然鳥も気づいて逃げてしまって「自分は撮れたからそれでいいや」って感じの人がいます。「すいません」と謝れば良いけど逆ギレする人もいたりして、とにかくマナーが悪い、マナーがなってないです。普通に当たり前のことを考えればできることが、全くできていない人が多すぎます。